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【選評】百年と八日目の蝉 - テックスロー

2017/08/16 (Wed) 23:36:11

こんばんは。

燃え尽ききれなかった思いの残滓のようなイメージの「八日目の蝉」。同名の小説は読んだことはありますが、いまひとつあの小説がそのイメージに沿っていたかどうか、内容も朧気なんですが、片足を引きずって歩くような感じだった気もします。そこに百年という言葉が引っ付きますが、幼虫時代なのか、成虫になってからなのかで解釈は変わりそう。
選評です。

△<百年と八日目の蝉7>
> おれたちは、おまえらの尺度で生きているのでは無ぇというのに、
なんかほっとしました。杓子定規に百年と八日というのを、(無理やりにでも)解釈して入れ込もうとする作品が多い中、それを尺度として切って捨てる潔さ。
百年も、「八日目の蝉」も、時間の解釈だけなので、そこで鳴らし続けるセミの声。
ロックンロールが聞きたくなります。

〇<百年と八日目の蝉1>
>百年なんて、馬鹿おっしゃい
小気味いいテンポでハイハイ、百日も八日も入ってていいね、オッケー! と読み飛ばしていたのですが、なかなか含蓄があって、いいな。無責任な父親と過保護な母親、刹那的な友人、その間で何も変わらないことは自分だけが知っている。解釈や意味づけに対する反発という意味では<7>によく似ていると思います。百年を「長い間」八日を「短い間」として対比させている点はとてもよかったです。タイトルは百年八日目、もしくは36500日+25日+8日で36,533日目の蝉ではないので、タイトルの言葉を登場させるなら、百年にも、八日にも、何らかの意味を持たせてほしかったので、この作品はそういった期待に応えてくれたため、支持します。

×<百年と八日目の蝉13>
> それは長いあいだ名前を知らずに蹲っていた。
 創世記っぽさがいいと思いました。展開も好みです。だからこそ百年と八日のところの解釈をもう少し踏ん張ってほしかったなと思いました。

〇<百年と八日目の蝉5>
> 気付くとこの地で倒れていた。
 日付の切り取るこわさというか。長いこと、長いこと、幸せに暮らしましたとさ。という民話だったり、昔話だったりあるのですが、そこにじゃあぶっちゃけ何年何日経ったの、って物差しを入れると、立ち現れる百年と八日目。前述の36,533日目として解釈をしてもいいし、百年と八日目、つまり永遠の命を与えられたものとして解釈してもいい。たぶん主人公は後者を桃を食べながら感じて、「幸せ」といったのかもしれない。そこまではいい。昔話的にも、ハッピーだ。問題はそのあと、「幸せだったのさ」という爺さん。そういう計りを持っていたころの幸せはもう感じることができないという残酷さ。いったい何年そこで桃を食っているのか。そして爺さんはそう遠くない未来に時間を感じられた幸せを忘れてしまうのか、もしくは消えていった、もう感じられない幸せの記憶だけがどんどん積み重なっていくのか。いずれにせよ。



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