500文字の心臓

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短さは蝶だ。短さは未来だ。

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【選評】百年と八日目の蝉 - 雪雪

2017/08/27 (Sun) 06:42:13

 ごめんなさい。毎度周回おくれの雪雪です。今回もぜひ選評したいしたいと思いつつじりじり過ごし、ようようこのタイミングでちょっと余裕が。

○<百年と八日目の3>紅い花が咲いた。9日前
 少なくとも日本で、聴覚が健常な人に読まれる限りにおいて、蝉声の描写は必要ないし、それがいきなり止むことのクオリアを絶妙に表現する必要もない。しなくたって鮮烈だから。ゆえに、いきなりの、ごく節約された最終行の切れ味が成立する。
そこに達するまでに不吉なアフォードもちりばめられているが、野次馬根性の浮ついたざわめきにマスキングされている。

物語のなかで蝉の声がいきなり止むと同時に、物語もいきなり終わり、文字情報の流入が終わるという脳内の現実が演出効果となって、えもいわれぬ静けさのクオリアが残る。去って行った蝉声と、去って行った物語に取り残されて、不穏であるべきだったのに不穏でなかった不吉さが不穏を取り戻す。野次馬たちとともに、ひとしきり息をひそめてしまう。
ぜったいなにかおこる。しかし今どうすることが賢明なのかわからないじっとしているべきなのかじっとしている場合じゃないのかわからないままにじっとしている一秒。
二秒。
三秒。

×<百年と八日目の9>りゆ婆
 笑顔を間接的に「皺」で表現しようとするところで、「口元にニヤッと浮かんだ皺」ってのはねぇだろう、と思った。

○<百年と八日目の蝉13>それは長いあいだ名前を
 岩波文庫を連想した。収録されることのステータスを自認している岩波文庫は、評価の定まりきった人しか収録されない。つまり死んだ人だけ。
(ごくごくまれに例外がある。生前葬みたいなものかな。そして、生きている著者も文庫化したくてたまらなくなったので同時代ライブラリーが生まれ、それを継いで岩波現代文庫があるわけです)

なにものかに真の名がつけられるとき、それはなにものかが滅んだ後のことだろう。意味や定義が変わってしまうような新しいことを、やらかすおそれがなくなったときのことだろう。
すべてが滅んだとき、神はたくさんの名をつけた。
すべてが滅び均された後、やがて「すべて」も名づけられる。

蹲っていた「それ」が地上にあらわれたとき、清められきった地上にもはや食べ物もないから、「それ」は抽象的な存在である。
すべての後にあらわれ、名づけられるそれは、滅んだ「すべて」に与えられる最終的な名前の「意味」である。
それが名づけられた後、「名づけ」という行為も終わり、「名づけ」という行為への真の名が授けられることだろう。
そして神はすることがなくなり、自分を名づけはじめる。名づけ終わることのない長い長い名前になりそうだと神は思っているが、果たしてそれは、さだかではない。

【選評】百年と八日目の蝉 - 瀬川潮♭

2017/08/26 (Sat) 03:08:14

 ふらっと、瀬川です。

 いまさら選評?
 仕方ないじゃないですか。いまやらなくちゃならないことから逃避したいんだから(
 選評期間過ぎてるから感想だけ。といいつつ票も(カウント無しで大丈夫です)。
 割と堂々としているのは、作品参加してなくて、いろいろ取り込んでて今回完全不参加の予定だったから。いろいろすみません。


<百年と八日目の蝉1>
>百年なんて、馬鹿おっしゃい
 軽快でとっても楽しいです。
 主人公、周りがお亡くなりになって泣く(鳴く)こともなさそうですね。

<百年と八日目の蝉2>
>パッと咲いてパッと散る、はずだった
 デビュー曲は? デビュー曲のタイトルは?(瞳キラキラ

<百年と八日目の蝉3>
>紅い花が咲いた。9日前の
 面白かったのですが、ややまるで字に書いたようなのが残念でした。主人公の表現力というか注意力はこの程度ということなのかもしれませんが。「絵になるはずなのに」あたりから引っ掛けていたのなら、聞き流してくださいませ。
 百年、そして八日目の使い分けは素晴らしいな、と思いました。

<百年と八日目の蝉4>
>陽炎が揺らめく中、蝉のじいじい鳴く声が聞こえる。
 果たしてどちらが地獄か、と楽しませていただきました。

△<百年と八日目の蝉5>
>気付くとこの地で倒れていた。住民たちに優しく介抱され
 高いところから落ちたような擦り傷があった、みたいなところですかね。とか想像して楽しみました。それはそれとして、モモがとってもおいしそう。しっかり描かれているのが好感。

<百年と八日目の蝉6>
>いっそ自殺してしまおうか。
 泣き(鳴き)を入れないすがすがしさよ。

<百年と八日目の蝉7>
>おれたちは、おまえらの尺度で生きているのでは無ぇと
 なかなかロックな感じで。見習いたい。

×<百年と八日目の蝉8>
>すでぐに私は百二十年前に死に別れた妻に一目惚れした。
 ごめんなさい。ついていけませんでした。読みが足りなかったら申し訳ございません。

△<百年と八日目の蝉9>
>りゆ婆が食べなくなった。おしっこも出
 主人公が、あの時からどんな百年間をおくったのか急に気になって……え?! 百年!? 
 とかそんな感じに読みました♪

<百年と八日目の蝉10>
>永遠と玉響の、揺らぐ時間の虚ろに
 下の句の流れがとっても良かったと思うのです。

<百年と八日目の蝉11>
>呪いが解けた姫は、夕暮れの地表へ出て木の幹を登り
 キスキス♪
 ……それはそれとして、確かに素手でとってたけどさ(

<百年と八日目の蝉12>
>漠々たる世界で、一度の絶叫より
 一度だけ絶叫する蝉ってのがむしろツボです。

<百年と八日目の蝉13>
>それは長いあいだ名前を知らずに蹲っていた。なぜそこに
 もしも、人が死に、病が蔓延し、田畑が荒れた原因であるなら、なおさら。

<百年と八日目の蝉14>
>百八蝉については諸説あるが、その多くは
 良い話のような気はします。気がするだけなのか、な感じですが、どう評していいのやら、という感じです。感心はしているのです。

<百年と八日目の蝉15>
>「博士、すごい発見をしました!」
 生体の地上での存在期間が増えることで10年後には地上における生体総数が約14%増えることになり、その分蝉時雨も10年後には約14%音量が増えるということじゃな、こりゃなかなか近所迷惑じゃわい、とか楽しませていただきました。

◎<百年と八日目の蝉16>
>お祖父さんの最期、ねえ…。あなたも知っての通り
 なんだこの腹上死は!(違



 以上です。
 繰り返しますが、大遅刻ですし票はいつもの作業なので入れただけなので、カウント外でも問題ないです。


 なお、瀬川は
「ラジオ体操に今朝も参加。参加票に蝉のスタンプ、ぽんって押してもらったよ。でもこの蝉、もう百個目越えてるんだけど……」
 とかいうのを用意してたけど八日目全く関係ないや、ということで参加を見送ったのでした。

【選評】百年と八日目の蝉 - 胡乱舍猫支店

2017/08/21 (Mon) 21:29:58

遅れて申し訳ありません。某超短編の締切に気を取られて失念していました。

◯<百年と八日目の蝉2>
>パッと咲いてパッと散る、はずだった、花火のように。

音楽方面は(もでは?)非常に疎いのでこういった話にはとても惹かれます。不粋とは思いましたが色々調べてしまいました。まだまだ謎や含みがありそうです。

◯<百年と八日目の蝉14>
>百八蝉については諸説あるが、その多くは【Cicada Of 108】というJazzの楽曲に由来すると言われている。

これも音楽の話ですね。蝉は啼き声がオーケストラに例えられたり、「合唱」したりするので音楽と相性がいいのかもしれません。
どうやら異なる人類(?)の物語の様でそう言ったところにも惹かれますね。

△<百年と八日目の蝉4>
>陽炎が揺らめく中、蝉のじいじい鳴く声が聞こえる。

真夏は生命の溢れる光と同時に濃い死の影を感じることが多いのですが、まさにそれかなと思いました。(果てし無く◯に近い△です。)

△<百年と八日目の蝉7>
>おれたちは、おまえらの尺度で生きているのでは無ぇというのに、どうしてもおまえらはそうやって比べねばならねえのだな。

この蝉は百年と八日生きてさらにまだまだ生きて(ヒトより生きる?)鳴き続ける様ですが、それはそれでまた哀れな気がするのは結局のところ、ヒトは自分の基準でしか物事を測れないと言う事でしょうか?

×<百年と八日目の蝉5>
>気付くとこの地で倒れていた。

自分基準で1番お題からは遠いかなと。ちゃんと読めていない可能性もありますが申し訳ありません逆選で。

【選評】百年と八日目の蝉 - まつじ

2017/08/21 (Mon) 21:17:13

遅刻と、前回の選評に参加できなかったことをここにお詫び申し上げます。ごめんなさい。
ちなみに、紙男さん「な、なんだってー!」に正選票を、雪雪さん「そこ、ビデオ」に逆選票を投じたい気持ちでございます。
さて、本題。

<百年と八日目の1>百年なんて
彼女(?)は何でありたかったのでしょう。「蝉じゃない」は、いつから抱えた思いだったのかが気になります。

<百年と八日目の2>パッと咲いてパッ
 コラム風の蝉。こういう切り口は予想していなかったので新鮮でした。説明部分が大半を占めているのがもったいない印象です。

<百年と八日目の3>紅い花が咲いた。9日前
 怪しい気配。「まるで亡者が恨み言」など、語りを最低限にして「何を呟いているのか想像させられれば、「病んだ蝉時雨」の不穏な空気がより際立ったのではないでしょうか。

<百年と八日目の4>陽炎が揺らめく中、蝉のじいじ
 様子が妙な「僕」の行動は気になるけれど、目的が私には分からないのは意図されたものなのか否か。面白そうな設定なのですが、全体的に謎が残ります。

<百年と八日目の蝉5>気付くとこの地で倒れて
 おいしそうな桃。自分のことは棚にあげてしまいますが、こういうときの爺さんの登場はステレオタイプではあるように思えますね。この地にきた状況が同じだったとするならば、この爺さんが「何か」を思うにいたったきっかけが気になるのです。

<百年と八日目の6>いっそ自殺してし
 蝉様の感情の動きがよくわからなかったのは、「自殺してしまうか」と考え始めた彼に「逃げる」という選択肢があったからでしょう。余談ですが、なぜか、蝉に一人の少年が採集された と初読してびっくり。

<百年と八日目の7>おれたちは、おまえらの尺
 「哀れの眼で聞く」という文章に少々ひっかかりは覚えますが、言いたいことはわかるような気がします。なぜこの口調なのか、それが気になって仕方がありません。

▲<百年と八日目の8>すでぐに私は
 なにかが仕掛けられている。のは感じるけれど、それを解く能力は私にはないのでそれ以外を楽しむこととして、「第七群」のくだりなんかは、不思議とわくわくしてしまいました。もうちょっと、ちゃんと読めたいなあ。

●<百年と八日目の9>りゆ婆
 他の方はどうかわかりませんが、「りゆ婆」が「りゆ」呼ばわりされる地の文で一瞬前後不覚になりました。「まったく同じ部屋」と強調されるからには何かあるのだろうとは思いつつそこも読み解けず。でもなんだか最後の一文はよいですね。

<百年と八日目の蝉10>永遠と玉響の
 後半の文体がやわらかくなっているのに違和感がありましたが、作戦なのかもしれないとも思います。うたでつながる毛色のちがう前と後。音をイメージさせなくなっているのがポイントでしょうか。

●<百年と八日目の蝉11>呪いが解けた姫は、夕
 まさかの王子。意地の悪いおはなし、と私は読みましたが、そういうストーリーではないのでしょうか。個人的にはなかなかきらいでないオチでございます。

< 百年と八日目の蝉12>漠々たる世界で、一度の
 一文で孤独な空間と永遠のような時間を描いている点はすてきだと思いますが、なんだろう、切れ味が足りない。「一度の絶叫」に込められた思いが何かは分かりませんが、「一度」という表現も少々腑に落ちないので、そこのあたりがポイントなのかもしれません。

<百年と八日目の蝉13>それは長いあいだ名前を
 後半に物語的な盛り上がりはあるけれど、示唆するところがよくわからず、死に絶えるときに名前が与えられる理屈にもたどり着けなくて、好きなフレーズの「元もと地上とはそういうところだったので」を反芻してみました。

▲<百年と八日目の蝉14>百八蝉については諸説
 蝉というテーマにJAZZを見出した理由が単純に気になりますね。しれっと「千年生きる」と言ってしまうあたりが好みではあります。百年 と 抜け殻 を使った上手にお話が出来上がっていて感心いたしました。

<百年と八日目の蝉15>「博士、
 あっはっは。いろいろツッコミたいような気もするのですけれど、このていの作品にそれも野暮なのかなと。軽い読み口が魅力です。オチに、もそっと皮肉が効いていると別の魅力も生まれる気がしますね。

×<百年と八日目の蝉16>お祖父さんの最後、ね
 この感覚がわかるかわからないかでいうと、わからないのだけれど、不思議な熱量。「って、思ったわ。」が、よいですね。ただ、パンツはともかく、何か掛けてあげたりしないものだろうかという些末なことが気になってへんな感じです。

 以上です。
 蝉がいっぱい。個人的には御免こうむりたいですね。

バカチョン朝鮮人チョン公 - チョン朝鮮人宮武義彦

2017/08/21 (Mon) 15:27:44

借金踏み倒しやめろ裁判所家財道具一式差押え無一文無一物宮武義彦

【選評】百年と八日目の蝉 - 海音寺ジョー

2017/08/21 (Mon) 09:11:54

遅くなってすみません、海音寺ジョーです。


○<百年と八日目の蝉2>
> パッと咲いてパッと散る、はずだった、花火のように。

不死身の蝉という逆説的なネーミングがすごく良かったです。

○<百年と八日目の蝉8>
>すでぐに私は百二十年前に死に別れた妻に一目惚れした。

言葉で音楽を表現するという難しさに、このようなアプローチがあり得るのか、と何度も何度も読み返させられました。楽蝉の鳴き声、聴いてみたいです。

△<百年と八日目の蝉3>
> 紅い花が咲いた。

物語全体から湧きたつ得体のしれない不穏さが、とても良かったです。

△<百年と八日目の蝉7>
> おれたちは、おまえらの尺度で生きているのでは無ぇというのに、

語り手の堂々としているところに、とても惹かれました。

×<百年と八日目の蝉15>
>「博士、すごい発見をしました!」

面白かったです。好意的な逆選を。

<百年と八日目の蝉14>
> 百八蝉については諸説あるが、その多くは

百八蝉のいる世界での人間の寿命が千年という発想にすごいセンスを感じました。昔読んだ雑学の本に、生物は全盛期(人間なら20年)プラス5倍生きられる基本能力がある(人間なら120年)というようなことが書かれたのですが、千年生きられる未来がきたら、文明の爛熟とかどうなってるのかな?と考えさせられました。



以上です。よろしくお願いします。

【選評】百年と八日目の蝉 - つとむュー

2017/08/20 (Sun) 23:55:17

〇<百年と八日目の蝉11>
>呪いが解けた姫は、夕暮れの地表へ出て木の幹を登り、
百年経つと、アブラゼミが超レアになる時代が、
本当に来るのかもしれませんね。

〇<百年と八日目の蝉13>
>それは長いあいだ名前を知らずに蹲っていた。
『分類』という言葉で、「百年と八日」と「死後の蝉」とを
上手く結び付けられているのが良かったです。

△<百年と八日目の蝉4>
>陽炎が揺らめく中、蝉のじいじい鳴く声が聞こえる。
八日目の蝉を探す、というアイディアが自分好みでした。
もう少し百年っぽい感じが出ていたら〇にしていたと思います。

△<百年と八日目の蝉6>
>いっそ自殺してしまおうか。
八日目の蝉が百年、二百年と後世に残るというアイディが
面白かったです

×<百年と八日目の蝉16>
>お祖父さんの最期、ねえ…。
月明かりに浮かぶその光景を、つい思い浮かべてしまいました。
とても印象的だったので、×にさせていただきました。

以上、よろしくお願いいたします。

【選評】百年と八日目の蝉 - ななしあきら

2017/08/19 (Sat) 16:36:46

今回初参加になります。掲示板ではありがとうございました。>脳内亭様

「八日目の蝉」という小説もあるそうですが、百と八と言えば百八の煩悩。煩悩とセミがどう結びつくのか、私自身さっぱりですが、もしそんな作品あれば、読んでみたいと思っていました。

◎<百年と八日目の蝉7>
> おれたちは、おまえらの尺度で生きているのでは無ぇというのに、
昆虫の分際で不敵な態度が清々しい。全くその通りですよね。

△<百年と八日目の蝉10>
> 永遠と玉響の、揺らぐ時間の虚ろに、いのちの夢が揺蕩う。
こういうの書ける人、羨ましいなあと思います。木漏れ日を見上げながら夏の林を彷徨っているような景色が浮かんできて、とにかく素敵です。
ただ、お題との関連としては、背景が説明不足なので、次点にしました。

△<百年と八日目の蝉3>
> 紅い花が咲いた。9日前の雪の日、街外れの古木に。
面白い展開だと思うのですが、語り手の態度が不安げな割にはどこか呑気で、せっかくの最後の行が引き立っていないと感じました。
もう少し長い話なら、印象は全く違っていたかもしれません。

<百年と八日目の蝉12>
> 漠々たる世界で、一度の絶叫より孤独を鳴き続ける。
一行というのに面食らってしまったのですが、たぶん#1と同じような世界かと思いました。こういうの、嫌いじゃないです。

<百年と八日目の蝉13>
> それは長いあいだ名前を知らずに蹲っていた。
伝説めいた話にワクワクします。ただ、黙示録的な世界ではこうした場面に出てくるのは、やっぱり蝗かなーと思うので、その辺に説得力が欲しいと思いました。

×<百年と八日目の蝉16>
> お祖父さんの最期、ねえ…。
とても不思議で面白い話ですが、とにかく母親の供述が不自然で、
・下半身裸で一週間も放置
・その間、医者を呼ばない
・夜も部屋の窓が開けっ放し
・「似つかわしいな」という発言
以上の点から、祖父の死は母親の犯行だと思われます。
「犯人はお前だ!」とか言ってみたい。

などと勝手なことを書いていますが、特選以外では一番印象に残りました。

以上です。

【選評】百年と八日目の蝉 - 磯村咲

2017/08/19 (Sat) 11:51:03

ツクツクボウシが未だ鳴かないのですが、ここんとこの夏はどうなっとるんじゃ。

○<百年と八日目の蝉4>
> 陽炎が揺らめく中、蝉のじいじい鳴く声が聞こえる。僕は雑木林の中へと進

スイッチを押したって場面の転換にはもう少しかかりそうなものなのに、ぶちゅっ→おぎゃあなのがすごいです。
地中の蝉のお腹の中では世界が育っていて、成虫になって八日目に成熟するのだけれど、主人公はしくじって未成熟な世界を展開しては取り込まれることを繰り返していると読みました。


○<百年と八日目の蝉8>
>すでぐに私は百二十年前に死に別れた妻に一目惚れした。

楽蝉の奏でる音色。
それまで無かった方向に陰影がついて、言葉が生まれ、世界の見え方が変わるところを目の当たりにしたいものです。
後半、高圧の静寂(!)が減圧に転じると記憶と記憶にない記憶の奔流がやがて到るであろう空虚な静寂を目指すのが圧巻で、言葉でしか読めないものを読ませる構成に感心しました。


△<百年と八日目の蝉2>
> パッと咲いてパッと散る、はずだった、花火のように。あるいは台風のよう

上手い。
前記の<百年と八日目の蝉8>にも通じるのですが、目的に応じて数種のプログラミング言語を的確に使い分ける人に見えている世界はどんなだろうと最近よく思うのです。2077年のパンクを体現する、ナノファイバーでできた彼らのパフォーマンスはどんななのでしょう。「死にぞこない」ではなく八日目を超越した《不死身の蝉》なのですね。


△<百年と八日目の蝉1>
>百年なんて、馬鹿おっしゃい

拍子、調子のよさと最後の意固地さの対照がとても面白いです。とにかく意固地。


×<百年と八日目の蝉5>
> 気付くとこの地で倒れていた。住民たちに優しく介抱され、住む小屋を与え

すんなりと読めるのです。何故桃なのかなとも思いつつ、読んでしまえるのです。このタイトルでのこの話であることになんのひっかかりも覚えないくらい、読んで終わりなのです。幸せなのかな。


<百年と八日目の蝉15>
>「博士、すごい発見をしました!」
上手いことは上手いけれど、適当がすぎるので逆選あげられません。

<百年と八日目の蝉16>
> お祖父さんの最期、ねえ…。あなたも知っての通り、お祖父さんはとても穏
祖父が九十幾つかで往生した時、通夜でおっさまが読経してる最中に庭先で蝉が羽化を始めたのを、喪主である父がずっと眺めていたのを眺めていたことがあり、親近感の湧く話でしたが、パンツは履かせられなくても何か掛けてあげるのでは。そして一週間飲まず食わずトイレにも行かずは老衰といえども代謝無さすぎではないでしょうか。

以上です。

【選評】百年と八日目の蝉 - テックスロー

2017/08/16 (Wed) 23:36:11

こんばんは。

燃え尽ききれなかった思いの残滓のようなイメージの「八日目の蝉」。同名の小説は読んだことはありますが、いまひとつあの小説がそのイメージに沿っていたかどうか、内容も朧気なんですが、片足を引きずって歩くような感じだった気もします。そこに百年という言葉が引っ付きますが、幼虫時代なのか、成虫になってからなのかで解釈は変わりそう。
選評です。

△<百年と八日目の蝉7>
> おれたちは、おまえらの尺度で生きているのでは無ぇというのに、
なんかほっとしました。杓子定規に百年と八日というのを、(無理やりにでも)解釈して入れ込もうとする作品が多い中、それを尺度として切って捨てる潔さ。
百年も、「八日目の蝉」も、時間の解釈だけなので、そこで鳴らし続けるセミの声。
ロックンロールが聞きたくなります。

〇<百年と八日目の蝉1>
>百年なんて、馬鹿おっしゃい
小気味いいテンポでハイハイ、百日も八日も入ってていいね、オッケー! と読み飛ばしていたのですが、なかなか含蓄があって、いいな。無責任な父親と過保護な母親、刹那的な友人、その間で何も変わらないことは自分だけが知っている。解釈や意味づけに対する反発という意味では<7>によく似ていると思います。百年を「長い間」八日を「短い間」として対比させている点はとてもよかったです。タイトルは百年八日目、もしくは36500日+25日+8日で36,533日目の蝉ではないので、タイトルの言葉を登場させるなら、百年にも、八日にも、何らかの意味を持たせてほしかったので、この作品はそういった期待に応えてくれたため、支持します。

×<百年と八日目の蝉13>
> それは長いあいだ名前を知らずに蹲っていた。
 創世記っぽさがいいと思いました。展開も好みです。だからこそ百年と八日のところの解釈をもう少し踏ん張ってほしかったなと思いました。

〇<百年と八日目の蝉5>
> 気付くとこの地で倒れていた。
 日付の切り取るこわさというか。長いこと、長いこと、幸せに暮らしましたとさ。という民話だったり、昔話だったりあるのですが、そこにじゃあぶっちゃけ何年何日経ったの、って物差しを入れると、立ち現れる百年と八日目。前述の36,533日目として解釈をしてもいいし、百年と八日目、つまり永遠の命を与えられたものとして解釈してもいい。たぶん主人公は後者を桃を食べながら感じて、「幸せ」といったのかもしれない。そこまではいい。昔話的にも、ハッピーだ。問題はそのあと、「幸せだったのさ」という爺さん。そういう計りを持っていたころの幸せはもう感じることができないという残酷さ。いったい何年そこで桃を食っているのか。そして爺さんはそう遠くない未来に時間を感じられた幸せを忘れてしまうのか、もしくは消えていった、もう感じられない幸せの記憶だけがどんどん積み重なっていくのか。いずれにせよ。




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